-潔白-
「すべてをひけらかすことの何が罪だというのだろうか。
あるものすべては、知られるためにあるのではないのか」
でも、でもさ、
隠したいことの一つや二つ、誰にでもあるんじゃない?
「なぜ隠す必要があるの?
すべては等しく共有されるべきでしょう。
独占していいはずがないわ」
そんな、そう言ったって、
自分が自分であることを確かめるために、
自分しか知らないものを持っていても良いでしょ?
「もしや、自分という存在が自分のものだと思っているのかい?
けけっ。そこからして自然の摂理に反してるぜ?
すべては等しく共有されてんだからな」
じゃあ、誰のものだって言うんだよ!
自分は自分のものじゃないか!
「聞いていなかったのかね?
すべては等しく共有されている。
特定の誰かが特定の何かを所有するという考え自体が、
根本から間違っているということだ」
……ぼくは、認めないぞ。
自分は、自分のものだ。
他の誰のものでもない。
「ったくよ、こういうやつがいるから、
いつまでたっても平和なんて訪れないんだよなー」
「誰もがあらゆる思いをさらけ出して、
それを誰もが等しく把握してさえいれば、
諍いが起こることなどないでしょうに」
……くっ。
いいんだ、自分を信じろ。
多勢に無勢なだけなんだ。
独りになって、冷静に考えよう。
……こんなとき、あいつならどう言うんだろうな。
ていうか、なんであいつはここに来たがらなかったんだろう?