真逆は、逆に似ている。

真逆の考え、ってのがあったりします。
見当違いの考え、ってのもありますね。


真逆と見当違いって、どっちの方が正解から離れているのか。
「離れる」の意味にもよりますよね。


「とにかく遠い」ということを考えれば、
真逆の方が離れていると思えます。
いわば、端から端の距離ですからね。


ところが、「正解への辿り着きやすさ」という意味では、
見当違いの方が離れているんじゃないでしょうか。
真逆なら、反対向きを辿れば正解に行き着きますから。


こんな議論を図示してみると、こんな風になるんですよね。

とても単純化した例なんですけど。
この円の中のどこかに正解があるんです*1
で、実は赤い点が正解を指し示しています。


それに対して、青い点と緑の点は2つの案です。
すなわち、青い点は見当違いな考えを、
緑の点は真逆の考えを表していると思ってください。


これを見れば、なるほど距離として赤い点と近いのは青い点、
見当違いな考えの方です。
この図を見て、赤い点と離れているのはどっちだと聞かれたら、
やっぱり緑の点、真逆の考えの方が離れていますね。


そして先程述べたように、もし緑の点が真逆の考えだとわかったら、
中心を通って反対側に正解があるので、すぐ辿り着けるんですよね。


じゃあ、どっちの方が赤い点と「似ている」でしょう?
言葉を変えたところで、似ているのは青い点だろう、とも考えられます。
ただ、この場合は緑の点の方が赤い点と似ているとも言えなくもない。
というのは、さっきからの繰り返しになりますけど、
緑の点は反対に向きさえすれば、赤い点になるんですよね。


噛み合ってない議論は、いくら続けても正解に辿り着かない。
ところが、嘘の混ざった議論は、嘘を見破れば正解に近づく。
話の筋としては、嘘の議論の方が正解に似ているのです。
なんだか、わかりにくいですけどね。


ちなみに、この「似ている」を数学的に表したもの
内積というやつです。
内積、ご存知ですか?


内積で最も大事なことは、二つのベクトルの角度の差です。
ベクトルについては今は置いておくとしまして、
この場合は、2つの点と中心点を結んだ時にできる角になります。
赤と青では90°で、赤と緑では180°になってます。


そしてその角度をcos関数に放り込みます。
結果だけ書けば、cos90°=0、cos180°=-1です。
今は長さが1だと考えるので、それが内積の結果となります。


で、これから何がわかるのか。
内積で得られる結果というのは、
両方に共通する成分がどれだけあるかということなんです。
ということは、赤と青の共通成分は0、無いんですよ。
一方の赤と緑では共通成分-1。
マイナスって何だ、と言うと、しつこく言っている「反対向き」の意味。


「共通成分」というのが何との共通成分だったかというと、
赤い点、正解との共通成分であるわけですよ。
もし正解の考えだったら、共通部分は全部ですから1です。
試しに赤と赤の内積を考えると、角度差はありませんから、
cos0°=1となっていることがわかります。


それで、さっきの議論と結びつけてみますと、
共通成分0の議論は、どれだけ足しても何を掛けても0なんです。
対する共通成分-1の議論は、真逆だとわかる(-1を掛ける)と、
正解である1に辿り着けるのでした。
こう考えれば、真逆の考えの方が相当有用ですよね。


結論。
嘘でも間違いでも、話の筋が通っていれば議論は進む。
だべりばかりじゃ、議論は進まなーい!
……のかもしれません。


全体的にムリヤリ感の多い進め方でしたが、
果たして役に立つことはあるんでしょうか?
こういった、数学的なことと概念的なことの結びつけは、
なかなかに楽しいのですが、無理も多くて難しいです。
でも、楽しい限りは考え続けるのだろうなぁ。

*1:作成時のミスで楕円になっている気がするけど、気のせいです。断じて。