-貸借-

これだけあれば十分足りるでしょ。
ほらほら、持ってけって。


――ふむ。
  なるほど、頼んだ以上の数が揃っている。


だろ? だからさ。
さっさとここを通してよ。
時間がないんだよ。


――何故通さねばならぬ?


……は?
もしかして、約束を忘れた?
9個の宝を集めれば、ここを通すって言ったよね?


――無論、覚えておる。
  まさしく、9個の宝を集めれば此の道を開けると言った。


……あのさ、まさかとは思うけど、
道を開けるだけで通さない、なんて言わないよね。
そんな冗談はあいつだけでごめんだよ?


――無意味な戯言など言わん。
  察する通りに受け止めればよい。


じゃあなぜさ?
どうして通してくれないんだよ?
こんなにたくさん宝を集めたじゃないか!


――9個の宝を集めれば此の道を開けると言った。


聞いたよ!


――それ以外の条件に対しては、何一つ定義してはいない。


……ほえ?
ええっと、
言ってる意味がよくわからないんだけど……


「ひとしいおもさでなければ、つりあわない」


え?
って、いつの間に!?


――ご名答。
  望みを超えた見返りは、身を滅ぼす。
  適量を望み、適量を受け取るべきだ。


つまり、多すぎちゃダメってこと?
……じゃ、じゃあさ、
9個だけ持って行ってよ。
あとはぼくが持っとくからさ。


――選ぶなどという高尚な行為はできない。
  与えられた物で生きる、
  それが我々に与えられた使命だ。


「さいきてき、だな。
 ……ことばをかざるのは もうやめろ。
 いいか? あたえられたものでいきるのなら、
 あたえたものをうけとれ。
 おおすぎるというのなら、
 それにあたいするなにかをかえせ」


――それはできな――


「これはあなたへの『かし』だ。
 いつか かならず『かり』をかえせ。
 おい、ゆくぞ」


お、おう……
いいのかな、通っちゃって。
ま、いいか。