一つの命が消えること

なんだか、ぼくの周りでそんな風なことがあったようです。
特に面識もなく、同じ集団に属していただけで、
ぼくにとっては近くて遠い存在なのですが。
――自殺、だそうです。


自殺も他殺も同じ殺人だと、ぼくは考えています。
自殺というのは、殺されつつ殺すことなのです。
だから、ぼくはその人を犯罪者としか見られません。
同情なんて、これっぽっちもしません。


昔の友人は、よくこんなことを言っていました。
「お前が病気や事故で死んだのなら、
　俺は手を合せてお前を拝むだろう。
　だが、もしお前が自殺したというのなら、
　俺はお前を笑い嘲ってやる」と。
ぼくも、これには概ね同感です。


生と死は、人の望み通りにはならないもの。
それを自ら閉ざすという傲慢。
可哀想だなんて、思えるもんですか。


しかし、です。
どうしてその人は、死のうとすることを決めたんでしょうか。
自分がこれから進むだろう道の先に、
ほんの欠片ほどの楽しみすらも見出せなくなったのでしょうか。


もし本当にそうなら、それは仕方が無かったと言いましょう。
でも、それがたとえどんなに小さかったとしても、
その人にとって楽しみがあったとするなら、
それに賭けてみようよと、ぼくは言うでしょう。
何度その賭けを外そうとも、ぼくは言い続けるでしょう。
だって、死んだらそれまでなんだもの。


当たり前のことに、感謝しよう。
生きていることに。
食べられることに。
立って、歩けることに。
ここにいることに。
感謝の輪があれば、もっと楽しくなるんじゃないかな。
生きていることを、楽しもうよ。