何故そうまでして取り立てたいのか

諸大学の入試問題がYahoo!知恵袋に投稿され、
偽計業務妨害容疑で受験生が逮捕された件、
ネット上で大賑わいとなっている話題ですが、
何故そうまでして取り立てたいのでしょう。


投稿者の心境を知って、何か得なことがあるでしょうか。
同情したいのでしょうか。
説教したいのでしょうか。
否、ただ暇つぶしがしたいだけだと思います。


大学入試でカンニングとくれば、面白がって人も集るでしょう。
それがネットに関係しているわけですから、
ある意味、事件現場を覗きに行けたりするのです。
野次馬の心理ですね。


さらにネット社会というのは、
それがどんな人物なのかは全く分からないのであって。
そもそも存在するかも分からない。
裏を返せば、どんな風にでも表現できます。


そして、浮かび上がる幾つもの犯人像を見比べる、
犯人探しの推理ゲームが始まるのです。
その主人公は、他ならぬ視聴者。
こうして壮大な推理ゲームが形成されて行きます。


この推理ゲームのために、無数の探偵が情報を集めます。
ならば情報局は、ご希望に応えて情報を提供するだけです。
しかし、他と同じ情報では探偵は見向きしてくれませんから、
情報局も様々な視点で取材に行かなければならないわけです。


つまり、
情報局が取り立てるから視聴者が騒ぎ、
視聴者が騒ぐから情報局は取り立てるのです。
取り立てておけば、情報局は儲かるのです。


視聴者は暇をつぶし、
情報局は儲かる。
損をするのは、実は当事者です。
実際、大学や当人宅に取材が相次いでいるみたいですからね。


ま、今回の場合、
大学側がわざと取り立たせたかったようにも見えますが。
放っておけば放っておいたで、
どうせ非難を受けるのでしょうから。


でもこの事件は、今後起こりうる不正の抑止どころか、
模倣犯を誘う気がしてなりません。
規模の大きい大学で不正行為がまかり通ったと
大々的に報道されているわけですかね。


平凡な人間は、誰かが同じことをしていると安心するんです。
だから、犯罪の報道が最も犯罪を助長すると思うのですが、
みんなが報道するから、一緒になって報道する。
みんなが騒いでいるから、一緒になって騒ぎ立てる。


そうして「誰か」を取り立てて、「特別」扱いして、
その「誰か」を不安に貶めようとする。
何故そうまでして取り立てたいのか。
それは結局、人間の「利己心」なんじゃないでしょうか。


人を思いやる報道、つまり
「誰か」を傷つけることなく、
「誰かのため」に情報を提供する、
そんな報道で世界が包まれることを、切に願います。